頬を引きつらせながら、あたしはどう答えようか必死に考えた。
あ、そういえば。
「あの、食事とか、飲み物でもいいんですけど、おいしそうに食べたり飲んだりする子が好きって言ってました!」
「へえ、おいしそうに、ね……」
田所さんは遠い目をして、舜と一緒に食事する自分を想像してるようだった。
あ、これはお気に召していただけたかも。
まさかあたしが言われたことだなんて、口が裂けても言えないけどね。
「こんどまた、今日のお礼に中村君に田所さんを誘うようけしかけておきますから、そのときに試されてみては……」
舜、ごめん!
あたしのために尽力してくれたのに、そんなあなたを売るあたしを許して!
「そうね、そうしようかしら。
じゃあ、見てあげるわ、原稿貸して」
「はい、お願いします!」
あたしは、田所さんの気が変わらぬうちにと、すばやく新作の原稿を渡した。


