バーを出て駅へ向かって歩いていくと、洋菓子屋さんの前にワゴンが出ていた。
数日後にせまったバレンタイン用のチョコレートの箱が山のように積まれている。
あー、そろそろ会社で配る義理チョコ、用意しなきゃなあ。
そんなことを考えながら横目でチョコを見ていたら、水野さんが急に立ち止まった。
「これ、一つ下さい」
水野さんは、チョコレートを一箱買うと、はい、と私に差し出した。
「え?」
バレンタインチョコをあたしに?
あたしは、戸惑った。
普通とは逆に、男の人が女の子にプレゼントして愛を告白するケースもあるって聞いたことあるけど、これって……
まさか、水野さんがあたしのことを!?


