「まあ、それは私の感想だけどね。
新人賞の選考をしたのは、『リリア』で描いていただいている先生方だから、落選理由はまた別よ」

そう言うと、田所さんは茶封筒を開けて中から紙を一枚取り出した。

「いい?よく聞きなさいよ。
どの先生の評価かは教えられないし、一度しか読まないから。
『ペンには慣れている。
デッサンはもう少し練習が必要。
背景が少ない。
コマ割りが単純。
絵が個性的で良い。
キャラが立っている。
ストーリー展開は良い。
読者層が合わない。
テーマが絞りきれていない。』
以上よ」

あたしは、田所さんが教えてくれた内容をひとことも忘れないように心に留めた。

田所さんは紙をしまいながら、あたしに聞いた。

「あなた、今まで賞を取ったことは?」

「いいえ、今回が初めての応募です」