驚いた表情で顔を上げた水野さんは、すぐに否定の言葉を口にした。
「いや、違う違う。
逆だよ……
その逆なんだ」
逆?
あたしは首をひねった。
水野さんはまた目を伏せて少し苦しそうに答えた。
「その日、バーを出て、美沙子さんをタクシーに乗せようとしたら、いきなり美沙子さんにキスされたんだ。
ずっと好きだったって言われて……」
「は?」
今度はあたしが驚く番だった。
「ねえ、かりんちゃん。
女の人って、これから結婚しようっていうのに、他の男に好きだって言えちゃうもんなの?」
水野さんに真剣な表情で聞かれ、あたしは固まってしまった。


