あたしは舜の前からさっと皿を取り上げ、残ったもう一つのアジの握りを自分の口に放り込んで言った。

「置きっ放しにしてたからだよ、もったいない。
新鮮なの握ってもらいなよ」

舜は少し驚いたようにしばらくあたしの顔を見つめてから、カウンターの中にいる板前さんを呼んだ。


「すいませーん、大トロとアワビ!」

「あたし、エンガワとハマチ!」


便乗してあたしも叫ぶと、舜はあたしの顔を見てニヤリと笑った。


「なあ、かりん」

「ん?」

「いや、やっぱ、いいや」

「なによ、気になるじゃん」

「俺さ……、諦め悪いかも」

「え?」