しかし、怒るかと思った舜は、怒るよりもあきれたようだった。
「あーあ、まいったな。
完全に俺の負けか」
舜は両手で顔を覆って天を仰いだ。
「別に勝ち負けじゃないでしょ」
あたしがそう答えると、舜は両手で前髪をかきあげてあたしに向き直った。
「で、水野は?」
相当水野さんが気になるらしい。
でも水野さんとは本当に何もないし、水野さんに迷惑がかかるのも避けたいから、あたしは正直に答えることにした。
「だから違うって。
なんにもないよ。
一度、たまたま仕事帰りに駅で一緒になって、ご飯食べに行っただけ」
「ふうん」


