−池谷 奈々
17歳 高3

それが私。でも私はその名前を両親に呼んでもらった記憶がない。
お父さんが浮気をして家を出て、お母さんは私を実家に預けていなくなった。

「あなたはお母さんみたいになってはダメよ」

それが祖母の口癖だ。
あなたの為とか言っているけど、夜私が寝てる時間にこっそり悪口を言っている事も知っている。
私は何とか気にいられたくて必死に勉強したりクラス委員をやったり[真面目な良い子]を演じてきた。

だけどそれでも1度たりとも私が褒められる事はなかった。この家にいた同じ歳の私の従兄弟を可愛がっていたから、私が優秀なのは悔しさだけだったのだろう。

高校は退学。
クラスでいじめられている女生徒を庇い止めた手が相手の目を叩いてしまったのが理由だった。
それをどんなに主張しても祖母は聞いてくれなかった。

そこからの私は髪を染めアルバイトをし、煙草を吸い遊んでばかりいた。

夜遊び−クラブ−カラオケ−合コン

そこには以前の私の姿はどこにもなかった。毎日同じ事の繰り返し…その現実にいつしか毎日はタルイとしか思えなくなっていた。

私が家を出たのはそんなある日。
持ち物は、煙草、電池の切れた携帯、財布の中には3千円しかはいっていない。

従兄弟に乱暴されかけた。
でも祖母も祖父も信じたのは私の言葉じゃなく、受験を控えてる従兄弟の言葉だけ…。

(息苦しい…)
そう感じた瞬間、鞄だけ手に取り家を飛び出した。