稔さんはほんまに優しい人や。


無口やのに、よう気がつくし、私がせきしたらさり気なくのど飴をくれたりする。



1週間に一度しか会えないんやけど、私の毎日を輝かせてくれる人や。



「美知さん。ちょっとお願いしてもええか?」


「稔さん・・・どうしました?」


高鳴る胸。


まるで少女のように・・・ドキドキしている。



「美知さん、字綺麗やったやろ。ここに名前書いてくれへんか?」



稔さんは新しいゲートボールのスティックを私に渡してにっこりと微笑んだ。



「私の字でいいんですか?喜んで書かせてもらいます」



「すまんなぁ。ここに書いてくれるか?」



手が触れた。


大きくて、がっしりとした稔さんの手。



「美知さんに頼んで正解やったな。ありがとう。大事にするわ」



信じられんと思うけど

還暦を過ぎても人は恋をして、嫉妬をして、ドキドキする。



グループ内で、同じ人を好きになって辛い思いをしたり

好きでもない男性から言い寄られて困ることもある。




小学校や中学校であるようなことが、ここでもあるんや。