佐紀 「さあ、私たちも、行こっ」

梨沙 「うん」

友理 「ところで佐紀、なんで、
    港北に、敬語使うのん?」

佐紀 「だって、出ちゃうんだもん」

友理 「みんな、同級生やん」

梨沙 「どうも、港北は、苦手じゃん」



歩きながら、友理が、思い出したように、
小声で、ポツリと呟く

友理 「殴ったら、アカン」

梨沙 「えっ?」

友理 「やっぱ、コーチ、
    殴ったら、アカンわ」

佐紀 「だよね。私、お父さんにも、
    叩かれた事、無いよ」

梨沙 「私も」

友理が、沈み込んでいる

佐紀 「どうしたの」

梨沙 「やっぱ、前、コーチに……」

友理 「ううん、コーチには、
    叩かれた事、無いわ。

    その代わり、無茶苦茶言われてん。
    ボケッ、とか、アホー、とか」

梨沙 「それって、言葉の暴力じゃん」

友理 「そやけど、私が
    出来なかったんやから……」

梨沙 「そんなことないじゃん。
    友理、いろんなこと、
    一杯、出来てたじゃん」

佐紀 「そうだよ。それ、前のコーチが、
    絶対、悪かったんだよ」

友理 「うん…」

浮かない表情の友理