部屋に入ると、違和感があった。


いつもの空気と違う。
ひんやりとしていて、ずっと人がいないみたい。



電気を点けると、違和感が現実のものになった。


「な、なんだよ…。」

目の前には、キレイに片付いている部屋。
そう。

結子さんと暮らす前の、俺だけの部屋。

部屋の角は結子さんの化粧スペースになっていたのに、何もない。



キレイに片付いているテーブルの上の封筒が目立っている。


…手紙?

なんだろう、この胸騒ぎ。
すごく嫌な予感がする。
この手紙を読んだら、もう戻れないような。


手が微かに震えている。

封筒からは1枚の紙。

見慣れた文字。


『タクへ。今までありがとね。   結子』


洗面所に向かった。
結子さんのピンクの歯ブラシもなくなっていた。