母親は職員室に寄ってから、保健室へ向かった。



ドアが開き、保健の先生が出て来る。


「すみません、ご迷惑をおかけしました」


母親は頭を下げた。


「急に熱がでたようですね。すぐに病院に行って下さい」



先生に支えられて杏は母親の元に行った。


「ありがとうございました」


杏はお礼を言った。


「あら、さっきの彼も待ってたんだぁ。いいわねえ青春しちゃって」


先生はクスッと笑う。


陽介は愛想笑いを返した。



「陽ちゃん、ありがとうね。駅まで送って行くわ」


そう言ってまた職員室に寄ってから、車に乗り込んだ。



「杏は、後ろね」


後部座席を下げると寄りかかるように座った。

持って来た毛布を掛けて、すぐに目をつぶった。


「陽ちゃんは前へどうぞ」


陽介は杏のカバンを後部座席に置くと、助手席に座った。



母親は運転しながらシーンと静まり返った車内の雰囲気を打破したいため、陽介に話し掛けた。