【ゆかり】



たっくんが来夢を飼ってくれると言った時、嬉しくて涙が出た。


たっくんが来夢に見せる笑顔がとても優しくて、たっくんの将来の姿…想像したんだ。



赤ちゃんを見つめるたっくんのパパの目。


いつか…


たっくんと私の赤ちゃん…欲しいって心から思ったんだ。



風が強くて、涼しかったからか…たっくんの手のぬくもりをいつもより温かく感じた。




猫……


好きだったんだ。




だけど、ずっと…飼えなかった。





小学校の頃だった。


学校の帰り道、土管の中でミャアミャアと鳴く子猫を見つけた。

どうしても助けたくてこっそり家の庭に連れて帰った。


怒られると思っていたのに、お母さんは優しく受け入れてくれたんだ。


真っ白でかわいい子猫だったので『ミルク』って名前を付けた。



まだ小さくて、自分でミルクも飲めなかった『ミルク』…


小さなスポイドで少しずつ少しずつ何時間もかけてミルクを飲ませる。

ほんのちょっとのミルクを小さな舌でペロペロって舐めるんだ。


すごくかわいくて、大事で…

ミルクの事しか考えてなかった。



だけど…


神様はいじわるだ。




1週間もしないうちに、ミルクを天国に連れて行ってしまった。


まだ小さくて、私が見つける前に栄養を取ってなかったせいで…衰弱してた。



誰に怒りをぶつけることもできず、ずっと泣いてた。


妹のまあちゃんと2人で、泣きながら山の中へ埋めに行ったね…


2人で…ミルクに手紙を書いて…

ミルクを、大好きだったハンカチに包んで

手紙もその中へ入れた。



『ミルクへ


私達のところへ来てくれてありがとう。


ミルクに会えて良かったよ。 』