何人かの生徒が坂道を駆け下りて来た。
いろんなヤツがいる。
こうやって、はしゃいですぐに学校から飛び出すヤツもいるんだなぁ。
卒業式が終わったら、すぐに遊びにいくヤツ。
学校が名残惜しくて、みんなで写真ばかり撮るヤツ。
卒業式に好きな人を探し、第二ボタンをもらうヤツ…
俺らん時もそうだったな…
第二ボタンをくれと言わないと思ってた恵に
『第二ボタンちょうだい』と言われて、別れるのをやめようと思ったっけ。
2月末頃だったか…浮気発覚して、俺が別れようと言った日は―
その日の夜中に、泣きじゃくる恵からの電話で俺が恵の家へバイクを走らせた。
恵は、大きな家にたった一人だった。
両親はあまり夜に家にいなかった。
夜の仕事をしていたのか、他に家庭があったのか…
俺には聞く勇気がなかったが…
リビングのソファで、カッターを手にした恵を見て、俺の心臓はすごい勢いで動いてた。
人生で初めてだったから…そんな場面に遭遇するのが。
手首から出る血が、とても真っ赤で綺麗な赤だったことを覚えてる。
その時は、まだわからなかった。
本気で死ぬ傷なのか、死なない程度の傷なのか…
とにかく、自分の彼女が手首を切った。
原因は…俺。
そのことが怖くて怖くて 泣きそうだった。