802号室…



深呼吸して扉を開けた。




個室で、誰もいなかった。


ゆかりもお母さんも…




お父さんが眠っていた。


寝息が聞こえてホッとした。




静かにお父さんの枕元に近づいて、


手を握った。





お父さん・・・


このまま目を覚まさなかったら・・・



俺、やだよ。




将来、奥さんのお父さんと晩酌するのが夢だって・・・


誰にも言ってない俺の夢なんです・・・





「お父さん…僕がゆかりさんを幸せにします。」


少し手を握り返してくれたような気がした。




「僕が、お父さんの代わりにゆかりさんとお母さんと妹さんを守ります。約束します…
でも…僕…お父さんと…まだ全然話もしてないし・・・一緒に酒も飲んでないし・・・」




お父さんは全く動くことなく、俺の大きな声も届いていないようだった。



「起きてください… 俺、バージンロードをお父さんとゆかりに歩いて…ほしいんです・・・」