ゆかりが俺を追ってきたのかどうかはわからない。



ただ、聞こえた。



「たっくん!!」


俺は、ゆかりと同じ過ちを犯してしまった。


愛する人の呼ぶ声は、どんな状況でも無視しちゃいけなかったんだ。



どんなに悲しくても


どんなに怒っていても


その人を愛しているなら


振り向かなきゃ…




俺は、店に入った。




仕事中、気になって仕方がなくて…俺は休憩時間に公園へ行った。



まさか、いる訳ねぇか。



湿気の多い夜だった。


変な虫の鳴き声と肌にくっつくような空気にイライラする。





いるはずのない公園で、ゆかりの姿を探す。



「たっくん!」



俺の背後から声をかけてきたのは、



ゆかりじゃない。




ゆかりじゃないことは、声を聞けばわかる。


だけど、もしかしたらゆかりかも知れないって俺は思いたかった。