さくらは、お菓子作りが得意でバイトにも持ってきてくれたことがあった。

それを、学校で庸介にあげたんだって。

庸介は、「お前へたくそ!」って言いながら、そのクッキーを全部食べた。

私には、照れ隠しにしか思えないけど、まだ恋愛経験の少ないさくらにとっては、悲しい一言で…


そのまま走って、トイレで泣いた。



「素直じゃないんだよ、庸介君は… でも、きっとさくらが特別な存在だと思う。」


「口で言ってる事が真実じゃないとしたら、何を信じればいいんですか?」


さくらに言いながら、自分自身にも言い聞かせた。


「…相手の目とか、声とか、さりげなく優しいとことか…かなぁ?いくら口がうまくても、その言葉に心が込められていないなら、心に響かない。」



野間さんの言葉は、正直よくわからなかった。


ドラマのような、綺麗な言葉達。

無駄のない口説き方。


普通の女の子なら言われて嫌な気がするわけがない甘い言葉。


そして、優しく思いやり溢れたキス。




思い出すだけでもドキドキした。


思い出さないように、さくらと話し続けた。