「中田ぁ、直最近どう?何か悩んでない?」

先生は、信号待ちの間、ずっと窓の外を見てた。

窓の外には、昼休みに学校を抜け出したであろう高校生のカップルがいた。


「うん。ちょっとだけ悩んでそうだったけど…でも、先生と直なら大丈夫だよ。」


私は手を伸ばし、先生の肩を叩いた。


「何かあったら、助けてやって。俺にはグチったりしないからさ。それにしても、嫌な偶然だよ…よりによって、直のバイト先に生徒がバイトしに行くなんてさ…」


これまた驚いた。


直は、何でも話してるんだね。


見習わなきゃ…



そう思ったのは、私だけじゃなかった。

隣に座る美亜も、初めて会う先生の言葉に感動してた。


「…素敵な関係ですね…私も絶対頑張ります。先生、Sな男の落とし方教えてください。」


突然の美亜の発言に、先生も苦笑い。


「Sかぁ…俺もSだけど、気付いたら心の中が直だらけだったんだよなぁ…」


先生は、照れることなくそう言うと、言った後で赤面してた。


「告白しない方がいいですか?」

美亜、告白するつもりだったんだぁ。

告白したら、付き合っちゃいそうに見えるけど…



「もう少し待ってみたら?まだ相手も悩んでる時期かも知れないし、そのネズミが2人を近づけてくれんじゃねぇか?」


「先生!!ネズミじゃないって!!ハムスターなんだから。」



美亜の家の前で、先生がハムスターを撫で撫でした。

優しい目が印象的で、その目がいつも直に向けられているのか…と思うと羨ましくなるくらいだった。



「ありがとうございました!!」

「先生、ありがと~!直にヨロシクね。」


「おぉ!じゃあ、美亜ちゃんガンバレよ。中田も、たっくん大事にしろよ。」


赤い車が見えなくなるまで2人で手を振った。

なんだか動けなくなってた。


昼間の太陽はすごく眩しくて、雲はゆっくりと浮かんでいて…


先生は、優しい香りを残して帰っていった。