「あ、たっくん?直です。今から先生とランチするんだけど、たっくんもどう?ゆかりも誘うからぁ!うん…うん、わかったぁ!じゃあ、店の前で。」




あっさりOKでびっくりした。

「たっくんの携帯変な雑音入ってたよ?投げたからつぶれたんじゃない?」

「え~、そうかも。だって、壁に傷付いてたもん。」



たっくんはどんな想いで、携帯電話を投げつけたのだろう。



先生と直に感謝。



こうでもしてもらわないと、明日のバイトもどんな顔して行けばいいのかわからなかった。



久しぶりにたっくんと一緒に働けるって言うのに…暗い気持ちのままで行きたくない。



私と直は、2人並んで髪の毛をクルクルと巻いた。


「先生と結婚したい?」


私は、鏡越しに直を見た。


「うん。したい。でも、今してもダメなんだ。もう少し私が大人にならなきゃ、結婚しても不安なまま。」


「直は、何が不安?」


「わかんない。そう聞かれるとよくわからないよ…でも、私だけの先生じゃないんだってわかってるけど、それが辛い。今も、誰かが先生を想って授業を受けてるのかなぁって想うと…こんな気持ちが一生続くと思うと…胃が痛いよ。だから、このまま結婚してもダメなんだぁ。もっと、自信を持てるまでは…」



直は前髪を整えながら話す。


ふと横顔を見つめる。


「ねぇ、ゆかり。私達、いつになったら恋愛で苦しまなくなるんだろうね。」


直がこっちを見て、にっこり笑った。