【卓弥】



珍しく髪をゴムでくくってる隆介は、同じ講義受けてる女子の注目の的だった。


クールな雰囲気で話しかけ辛いせいか、女友達はほとんどいない隆介だけど、隣にいる俺はいつも視線を感じてる。


最初は、俺が見られてんのかって自惚れたけど…恐らく隆介狙いの方が多い。



美亜ちゃんを紹介してから、まだその件について話してはいなかった。


ゆかりから聞く美亜ちゃんの盛り上がりぶりで、俺も隆介に聞く決心がついた。



「なぁ、あれからどうした?美亜ちゃんと。」

隆介は、眠そうにあくびをしながら俺を見た。


「はぁ?誰それ……あ~あの子?家まで送っていっただけだけど?」


隆介の口調からして、美亜ちゃんに申し訳ないが脈がないと思う。


「お前、彼女いね~よな?好きな女いんの?」


長い付き合いだけど、改まってこういう話はしたことがない。

合コンで何気に付き合って、3ヶ月くらいで別れるってのが隆介のパターンだった。


「彼女はもういらね。本気になんのは、疲れるよ。」


遠い目をした隆介。

その言葉は、俺が今まで隆介から聞いたことのないような重みのある言葉で…


俺はそれ以上何も言えなくなってしまった。


男同士って、恋愛の悩みを語り合ったりしねぇから、俺も隆介の過去の恋愛をよく知らない。


だけど、俺の見つめたその横顔からは、悲しみと寂しさがにじみ出ていたんだ。