俺がバイトから帰る時、店長に言われた。


「ゆかりのこともう泣かすなよ!恵もいなくなったんだし、仲良くな。」


いやいや…

さっきまで、すごく疑いの目で俺を見てたじゃないですか。


さすが、さくらちゃん。

どういうルートか知らないけど、店長の耳にまでもう届いてた。



久しぶりに働いて、スッキリした気分で店を出た。


一服しながら、月を見上げた。



ゆかりにメールを送る。


『バイト終わった。さくらちゃんと話したよ。もう誤解も解けた。またお礼言っといて。帰ったらまた電話する!!』


送信ボタンを押すと、同時に俺の耳に俺を呼ぶ声が聞こえた。



記憶の片隅に残ってる声…



「たっくん!!」




俺は、まだ後片付けが全部終わってないことに気付く。


自分のしたことの後片付けは自分でちゃんとしないとな…




「バイト復帰したんですね。心配してたんです。バイクなかったから。」


制服姿のその少女は、


あの日、孤独で消えそうだった俺を救ってくれた『千恵理』…




「ちょっと、話す?」


俺は、バイクを押しながら公園へと歩いた。


公園…ってのが少し嫌だったけど。



ベンチに座った。


俺のタバコの煙をじっと見つめてる千恵理は、何かを期待してる。



「ごめんな。あの時は…酔っ払ってて…よく覚えてなくて。」

「でも、今会ったとき、すぐに私ってわかってくれましたよね。」


嬉しそうな顔しないで。


ここから先を話しにくくなるから。



「あのさ…俺、彼女とやり直すことにしたんだ。」


「…………よか…った…です……」


消えそうな声で、そう言った千恵理の顔をチラっと見ると、

彼女は大粒の涙を流していた。