久しぶりのバイトは、とても楽しかった。


だけど…


みんなの目が少し怖かった。



その理由は…



俺がゆかりを捨てて、恵を選んだと思われてたから…



こんな雰囲気の中で、ゆかりはずっと働いてきたんだ。


そんな風に、みんなが誤解するくらいな行動を俺はしてたんだ。



そりゃ…ゆかりが誤解するのも当たり前だよな。


恵が明日でバイトを辞めると店長に話し、妊娠していることもみんなの耳に届いた。



俺は、一瞬…みんなの視線を感じ、みんなの誤解をどうやって解こうかと悩んだ。



きっと…


俺の子だって思ってる。



帰り際、少し早めに帰る恵が言った。


「タク、また何年かしたら現れるから、それまで元気でね。」


大きな声で言ってくれたのは、恵なりの気遣いだろう。




翌日のバイトでも、みんなの態度はなんとなくおかしくて…


明らかに、恵の子の父親だと思ってる。



洗い場を通る時、ゆかりと仲良しのさくらって子が、俺の腕を掴んだ。


「聞きました!復活おめでとうございます!!」


「あ、ありがと!いろいろ相談乗ってもらったってゆかりが言ってたよ。」


俺は、さくらちゃんの切りかけのメロンをひとつつまみ食いした。


「あのさ、みんな恵とのこと誤解してるよな?もし、良かったら俺とゆかりがうまく行ってること、なんとなく広めてくれる?」


いつだったっけ…俺のこと、涙いっぱいで怒鳴ったさくらちゃん。

あれで、目が覚めてれば良かったんだけどな。


「任せてください!!私の得意分野です!!」


さくらちゃんは、腕まくりをしてにっこり笑った。


「おう!ヨロシクな。それと、ゆかりのこともこれからも頼むな。」


「ハイ!!憧れのお二人なんで、仲良くしてくださいね!」



さすが、いまどきの女子高生だ。


噂を回す天才だ。