「え……っとぉ…それから、ゆかりに逃げられたあの日のことだけど…」


俺は、目をきょろきょろさせて落ち着かない…。


「覚悟できてるよ!」


ゆかりは、俺の手を握った。


ゆかりの手も少し濡れていた。




俺は、やけになっていたとは言え、浮気をしてしまったんだ。

ゆかりを愛してるのに、酔った勢いと、自分の弱さで…



本当にゆかりが許してくれるのか、確信はなかったけど、これからの2人の愛をどんどん大きくする為には、ちゃんと話さないといけない。



だけど…


うまく声が出ない。




「あのさ…あの後さ…俺、よく覚えてないんだけど…酒に溺れて…」


「うん…電話くれたとき、すごい酔っ払ってたから…ごめんね。あの時、私がたっくんを助けに行けなかったから。だから、覚悟できてる。」


ゆかりは、全て知ってるんじゃないかってくらい穏やかな表情だった。


「酒飲んで…地面に倒れてたんだ。そしたら、俺を知ってるって言う女の子が介抱してくれて、少し話した。その子、俺があの店でバイトしてるの知ってて…ファンだって言ってくれて…酒のせいにするつもりはないけど…かなり酔ってて…」


俺…ゆかりの目が見れなくなってる。


「うん。私が悪いんだもん。たっくんは一人ぼっちで寂しかったんだよね…エッチしちゃったの?」


俺は、思い切り首を横に振った。

年齢を聞かなければ、もしかしたらエッチしていたかも知れないけど…そこんとこは、どうか内密に…


「してない!!!!絶対してない。だけど、キスはしてしまった。ごめん。」


「…………覚悟してたけど…悲しいね。」


え??


やべぇ…!!


「ごめん!!ほんと、ごめん!俺、一生かけて償うから!!もうお前以外の女とキスなんて一生しねぇから!!」


店の中だと言うことも忘れて、俺はゆかりの両手を握り締め、大きな声を出した。


俺は、もう失いたくない。


過ちを犯した俺だけど、ゆかりが好きで好きで仕方なくて…それで、辛さから逃げた結果なんだ。


…誰が聞いても、間違ってる行動だってわかってるけど。