【卓弥】


俺…


一瞬頭の中が真っ白になった。



ゆかりのことを考えてばかりいるせいで、あいつの声が聞こえるようになったのか…



たっくん…?


俺は、振り返る。



さっきの酔った若者達が、公園に走る姿…


もう一度声がした。


「たっくーーーん……たすけ… 助けてーーーー!!」



聞き間違えるはずがない。



今まで何百回も聞いた愛しい人の声…




俺は、その声がゆかりだと認識する前に走り出していた。



公園の隅…




「おい!!」


俺は、輪になってる連中の一人を引っ張り、輪の中心で倒れこんで泣いている小さな背中を見つけた。


……ドカッ



俺は、殴りかかってきた男を思い切り蹴った。


3人くらいの男が俺を押さえつけようと近づいてきた。


俺は、目の端で小さな震える背中を見つめながら、手当たり次第に殴った。



俺の周りに倒れる連中の隙を見て、力強くその背中を抱きしめた。



俺の肩を蹴る男にも気付かないくらい、俺は必死で…


顔を見なくても


今、抱きしめている人が、俺の大事な人だとわかる。




「誰だよ!てめぇ!」


俺の背中を引っ張る手を払いのけると、俺に向かって拳が飛んできた。



「お前らこそ…俺の女に手ぇ出してんじゃねぇ!」


俺は、静かにゆかりから手を離した。


酒臭い男の胸ぐらを掴み、その目をじっと睨みつけた。



「今度、こんなことしたらぶっ殺すから。」



ドラマのように、その連中は『チッ』って言いながら、走って逃げてゆく。




ここが現実なのか、夢なのかわからないくらい混乱してた。