奈津姫が別の客の席へ行った隙に、『よる』と『愛柚』が俺を囲む。


「約束破りぃ!!楽しみにしてたのに…」

「でも、好きな子がいたんだねぇ。ちゃんと気持ち伝えなよ!」


よるが言った。


「泣きたくなったらいつでもここにおいで…いつでも待ってるから。」


俺は少ししんみりして、天井の豪華なシャンデリアを見つめた。



この場所は、俺にとって忘れられない場所になるだろう。


キラキラ輝く宝石のような場所。


ここが夢の中だと錯覚させてくれる場所。



俺は必要な人間なんだ…って自信をくれる場所。




奈津姫が戻ってくるのを察知した愛柚が俺の肩をポンと叩いて立ち上がる。



「もうここに来ることがないようにね!」



俺は2人に笑顔で手を振って、席を立つ。


戻ってきた奈津姫にお別れの挨拶。



「ありがとな!マジ…感謝してる。お前も幸せになれよ!」


「卓弥ぁ…彼女大事にね。」


涙を溜めた瞳を見て、俺はその涙は本物だと感じた。

嘘の涙なんかじゃない。


俺は、素晴らしい人達に出逢えたこと…一生忘れねぇ…



俺は、煌びやかな店を出て背筋を伸ばして歩き出す。




俺…ばかだけど…


やっとわかった。



自分がやるべきこと。



俺、何かっこつけてんだ?



好きな女に別れようと言われて、

何すんなり別れてんだよ…



かっこ悪くていいじゃん。


先生が言ってたよな…



かっこ悪いのが恋愛だって。



かっこ悪いけど…


ださいけど…


泣いちゃうかもしれないけど、


俺は大事な人を失いたくない。