戻ってきた奈津姫は、少し不思議そうな顔してた。
注がれたシャンパンからはすでに炭酸が抜けていた。
愛柚とよるの、顔はトロンとしてて…口数も少ない。
「卓弥君、お待たせ~!もしかして、心変わりしちゃったぁ?」
奈津姫は、そう言いながら俺にピッタリとくっついて座る。
いつもはこんなことしないのに…
やっぱ、嫉妬…とかって男も女も狂わせるんだなぁ…
なんて思った。
なかなか席を立たない2人に奈津姫が一言…
「もう、ここいいから!!」
奈津姫は、俺にくっついたまま俺の頬に触れる。
「ねぇ…この後、どっか行く?」
耳元で囁く奈津姫の吐息混じりの声がエロすぎて、俺は押し倒したい気分になる。
あぁ…俺、ゆかりがいなくても笑えてる。
ゆかりにフラれたけど、女ならいっぱいいる。
もう、俺泣かない…
だけど、ふとした拍子に俺の涙の泉が溢れ出す。
こんな涙もまた、女には効果的だったりする。
狙ったわけじゃないのに…
奈津姫は俺を胸に引き寄せ、大きな胸の間に俺の顔は挟まれる。
「卓弥…好きになっちゃダメ?」
胸の圧迫感なのか、洞窟の奥から聞こえてくるようなその声…
「俺を救ってくれるなら…俺も好きになる。」
本気で誰かを好きになった時、
『好きだ』という言葉はとても重くて、なかなか口に出来ない。
なのに…こんなに簡単に言えちゃうんだ、好きなんて言葉が…
誰に言い訳するわけでもないが
この『好き』は
ゆかりへの『好き』とは
全く次元が違う。
千恵理に感じた気持ちも、
奈津姫に感じた気持ちも、
恵に感じてた気持ちも…
どれも、なんか…違う。