男になる…か。いくらアタシが女らしく無いからって、胸ペッタンだからって……できそうな気がしないでもないかもー。

現実的に考えれば無理なコトだけどさ。

いくらアタシでも、弟の為に男子校に乗り込んだりしないから。

「心配だけど、琉珂ならうまくやってけるっしょ。」

急いで着替えると、空の弁当箱を持って階段を下りた。

「ただいまー」
「おかえり〜。」

キッチンに行くと、親父がタマネギのみじん切り中。

「母さんは?」
「まだ仕事。」

両親は共働きで、会社を経営している。親父は社長で母さんは補佐みたいなのらしい。
たぶん、親父よりしっかりしてると思う。

「親父は帰ってきてよかったわけ?」
冷蔵庫から牛乳を取り出しながら聞くと、うん。とずいぶんあっさりした返答。

「僕が残っても邪魔なだけだし…」
親父は社長という位にいても、身分は低いらしい。おっとりしすぎなんじゃない?

親父はカッコカワイいらしい。見事に琉珂に受け継がれてる。
アタシは…お母さん似。

「もうちょい頑張りなよ…」

そう言うと、包丁を持ったままアタシに飛びついてきた。

一歩間違ったら死ぬ!