重い空気の中、口を開く北斗

「今朝の事だけど、あの処分に異を唱える者もいるとは思う でも、ソレを覆すつもりはないのをハッキリ言っておきたい」

その言葉にスタッフは北斗から目を離さない

「北斗さん! 山岸さんは自分達と一緒に1年近く働いてきたんですよ!それを簡単に切るなんて酷すぎます!!」

そのスタッフの言葉にココは“あの人、山岸さんっていうんだ・・”と今更ながらの情報を得ていた

「だからだよ・・ 俺がシャッターを切っているから、世間では俺の作品って認識を受けているけど、自分の中では、俺の作品ではなく、チームの作品なんだよ・・ 去年もらった賞もみんなでとったものだと思っている チームだから、作品に向けての想いは一緒だと思っていたんだ でも、彼女は違った・・ 気付いていたか? 彼女の行動に?」

北斗の言葉にスタッフは、なんの話をしているのかわからなかった

「昨日の夕食の席でもそうだ・・ 今回ゲストモデルとして参加してくれたココちゃんに対する暴言、そして、今朝のやけど・・ あれはどう見ても故意にしたとしか思えない」

その言葉に息をのむスタッフ達

ココは、なぜ北斗が昨日の事を知っているのかが不思議だった

「彼女はモデルだ! その彼女に火傷という傷を負わせた上、処置が遅れるように彼女の腕を離さなかった・・・ 俺は、そういう行為をする人間がチームにいても良い作品が作れるとは思わない」

北斗の言葉を信じられない様子で聞いていたスタッフも部屋の隅で俯いているココの手に巻かれた白い包帯を見て何も言えなかった

スタッフの目に映る山岸美穂という女性は、仕事に熱心でいつも明るい女性だったからだ

そんな彼女が、この少女にそんな事をしたとは信じられなかったのだ

北斗は、潤也さんと廉から預かった大事なココを傷つけたことに対する怒りと憤りでココの沈んだ表情の真意が見えていなかった

明日の予定を確認した後、解散になったのだが、ココは北斗にも、スタッフに顔を向けることが出来ず、俯いたまま自室へ戻っていったのだった