「『若い頃は、突っ走れた事が、年重ねるごとにどんどん守りに入っちまう』って知り合いが言ってた」

顔を上げた北斗にニヤッと笑うレン

「・・・・・」

「まぁ、わからないでもないよ? 
周りを伺って、様子を見てってのもね・・ 
でも、いくら通っても、ここにココが顔を出すことは無いよ? 
ついでに言うと、高校に行っても無理だし、家に来てもいないからね」

先ほどとは違う真剣な表情のレンの言葉に北斗が強張る

「・・・・・」

「あっ、別に行方不明とかじゃないから」

北斗の顔があまりに引きつっていたので、レンは思わず笑ってしまった

「・・・・・」

「お前の撮影に参加させたのは、両親も俺もココにとってプラスになると思ったから・・

でも、最終的に参加を決めたのは本人だし
"お前の撮った作品を見たから"
ていつかココが言ってた・・ 
それを聞いて本当に安心した 
こっちの世界をやけに毛嫌いしていたココが素直にそう思えたことに・・ 
撮影旅行を終えて帰ってきたココは何か憑き物がおちたようにスッキリした様で、年相応に学校でも楽しく過ごしていたようだよ? 
今のココには目標があって、その為に転校して家も出た
だから北斗・・
そのきっかけになったお前には、本当に感謝しているんだ」

レンのその言葉を聞いた北斗は

「そうか・・・ 俺は会わないほうがいいのか?」

何も言わないレン

「俺は・・・」

言葉につまる北斗も肩をポンッと叩いたレンは、コースターにサラサラ・・と何かを書き北斗に手渡した

そして、振り返り、課題をこなしているハズのマキに声を掛け、そのままふたりでAQUAを後にしたのだった

一人になった北斗が受け取ったコースターには

11448 GrobeSt Port Orchard Seattle

0487-995-0181

と書いてあった

北斗はそれをポケットに突っ込み、グラスの中を一気に空にして、席を立ったのだった