夜になると───            



穴は周りの色と同化してしまいます。だから、見た目には誰も世界が滅びつつあるなんて判らないでしょう。


夜はしん、としていて、まるで動かない木馬のように静かです。



だけど、耳を澄ましてみると、

よくよく耳を澄ましてみると、聞こえるのです。
世界が失い続ける音が。



 ぱりぱり、ぱりぱり、と枯葉を踏むような音を立てて、着々と穴は広がっているのです。