憂鬱な気分のまま教室に入ると、そこには窓際に座る安藤以外誰ひとりおらず、ただ水を打ったような静けさが広がっていた。

姿勢良く椅子に腰掛け、窓の外に目を向けていた安藤が、気配を感じたのかドアの前に立つこちらに目を向けてくる。

俺の姿を確認すると慌てて立ちあがった。

「…すまない!今日は生徒会の仕事があるのか!」

安藤の言葉に眉を寄せた俺は、その視線が俺に向いているのではないと分かり、背後を振り返る。

そこにはニヤリと口元に笑みを浮かべている逢沢が立っていた。

「帰しませんと言いましたから」

分厚いレンズの向こうの鋭い瞳が、一瞬強く光った気がした。