「―会長。今日こそは帰しませんよ」
放課後。
今時珍しい、やたらとレンズがでかい瓶底メガネを中指で押し上げ、副会長の逢沢が眉間に皺を寄せて俺の目の前に大量の書類を差し出してきた。
一週間ぶりに見るその顔をため息をついて見つめ返し、人差し指で分厚い束を弾く。
「呼び出して来て何かと思えば…これを一日でやれってか」
「当然です。今まで会長がサボっていたツケですよ」
だいたい、と声を上げて俺の眉間に人差し指を突きつける。
「あんな落ちこぼれの安藤すみれに時間を費やしてるのが無駄なんですよ!ちゃんと自分の立場わかってンですか!?」
立場…。
「…まあ、ある程度は」
俺のそっけない返事に、逢沢の顔がぐにゃりと歪んだ。
「ある程度じゃ駄目なんですよぉおぉぉ!!」
叫びにも似たその声に耳を塞ぎ
放課後の勉強のために教室に待たせている安藤のことを考え、俺は大人しくそれを受け取り、またひとつため息をついた。

