保険医は、安藤の姿に驚きながらも手早く処置をしてくれた。

包帯を巻いたり、傷口にガーゼをあてられている間、保険医は何があったのか、誰にされたのかと安藤に繰り返し質問していたが、安藤はそれには答えず無言で首を振るだけだった。

「とりあえず、休んでおきなさいね」

保険は困ったようにそう言うと、奥のベットに手をひいて連れて行く。

俺もそれについていき、ベットに座る安藤の横に腰を下ろした。
保険医がベットから離れていくのを目で追いながら、ため息をつく。

「…すまない。」

うな垂れていた安藤が、ぽつり、と零した。

「…なんでお前が謝るんだよ」

眉間に皺を寄せそう返すと、暫く重い沈黙が流れた。



先にその静寂を破ったのは、安藤だった。


「…タチの悪そうな集団に、うちの生徒が金をたかられていたんだ。」


その言葉に、こめかみに手をあてる。
そんなヤツを、安藤が放って置くわけがない。

「それで、一人で戦ったわけか?」

そう言うと、こくり、と小さく頷いた。


…まったく

進んでそんな厄介ごとに突っ込む神経が理解できない。


しかし安藤は顔をあげると、目を輝かせて言った。

「でもな、少し危なかったが勝ったんだ!金も取り戻せたし、相手も無傷で―」

「―ッふざけんな!!」

怒声に、安藤が体を震わせて目を見開く。

「もし何かあったらどうする!相手は男で、集団で、助かったって勝ったって、一生残る傷が出来るかもしれねえんだぞ!?」

その言葉に、安藤の表情が苦しげに歪み、俺はそれに眉間に皺を寄せた。



「…それは…私が、女だからか?…七澤」


消え入りそうなその声に

ナツメの言葉が記憶から呼び覚まされ、目を見開く。



―「女」をあんなに嫌っていたすみれが―