翌日。

HR開始五分前になっても、安藤が教室に入ってこなかった。

…おかしい。

いつもなら、早くに教室に来て、黙々とテスト勉強をしている筈なのに。
眉を寄せてドアのほうを見ていると、ガラリと勢いよくドアが開いて、安藤がよろめきながら入ってきた。

その姿に、目を見開いた。

袖のやぶれたシャツ。
だらりと垂れたリボン。
痣だらけの顔、切れて血が出ている口元。


…なにが。

何があったんだ。


席から立ち上がり、教室の中によろよろとおぼつかない足取りで入ってくる安藤の手を取り、教室を出た。

「七澤くん!?」

担任の声が背後から聞こえ、振り返って口を開く。

「保健室に連れて行きます」

そんなことはクラス委員のやることなんだろうが、知ったことではない。
手をほどこうと、安藤が俺の手に掌を重ねてくる。

「七澤、いいんだ。気にしないでくれ」

こんなときまで遠慮して、平気なふりをする、その声が、姿が痛々しくて、この距離感がもどかしくてならない。

「…黙ってろ」


そのまま真っ直ぐに、保健室に向かった。