鬼のような形相で戸口に仁王立ちしていた安藤は、つかつかと男の前まで行くと、その蜂蜜色の頭を思い切り平手で叩いた。

俺はそれに目を見開いたが、叩かれた本人は何処か嬉しそうにヘラヘラと笑っている。


…そういう趣味なのか、と若干引いてしまった。



「何度言ったら分かるんだ!!親が心配するだろうがっ!!」
「そう言わずに一晩だけ~」
「駄目だ!」
「従兄弟じゃないか~」

俺の存在を完璧に無視して会話をしている二人をぼんやりと見つめていたが、その言葉に、ぱちり、と一度瞬く。


―成程。

…従兄弟か。


心の奥底で渦巻いていた感情が、すうっと消えていく。



「…ってか、」


間をとって呟かれた、男の、笑いを含んだ声に視線を向ける。
綺麗な茶色の瞳と目が合った。


「…“クラスメート”を泊めるんならさ、俺だっていいじゃん?」




……暫くの沈黙の後、安藤の重いため息が聞こえた。