安藤の父からきいた、俺の知らない安藤の一部。

安藤が強くならなければいけない理由。
その過去。

謎だらけの安藤だが、今日少しだけその中に綻びが見えた気がした。

知らないことを知ること。
それは久し振りに手に入れた真実の喜びで、一つ知ればまた一つ知りたいと欲が出る。


しかし、

この「知りたい」という気持ちは完璧な興味本意であり、そんな理由で他人の過去や心に踏み入るのは決していい事とは言えない。

それにその相手が安藤なのだ。


いま、これ以上、必要以上に安藤と居てはいけない気がした。


……泊まるなんて、尚更だ。


何よりも俺は、安藤にとっては「勉強を教えてくれるただのクラスメート」でしかない。

そんな俺が、これ以上深いところまで関わっていいのか。



俺は「女らしさが嫌なんだ」と言った安藤の、悲しげな笑顔を思い出した。
ちくりと胸が痛む。


安藤の父は、何か誤解しているようだったが、

俺は、安藤にあんな顔をさせてしまうような奴だ。

到底「変えられる」なんて思えなかった。



「―着替えなら俺のを使え」


…そんな俺の気持ちが巨体に届くはずも無く、巨体は俺の言葉を完全に無視して、そう言い、笑った。