「まあなんにせよ、アレには悪い影響ではないんだ。君に、その「条件」とやらを出されなければあれには本当に「強くなること」しかなかっただろう」
そこまできいて、安藤から既にすべて聞いているのだと理解した。
でも、最後の方の言葉が引っかかる。
「…強くなること?」
脳裏に過ぎったのは、道場でひたすらに拳を突き出していた柔道着姿の安藤だった。
巨体は頷いて、何処か悲しげな目で遠くを見つめて口を開く。
「母親が亡くなってから、あれは何かにとりつかれたようにひたすら武道だけに励んだ。…学業も疎かにしてな」
そこで、と座りなおして、テーブルに肘をつき髭に覆われた顎を親指で押さえ俯くと巨体はまた少しだけ笑った。
「このままではいかんと思ってな。なかなか家には居らんくせにこういう時だけ父親面したくなって、学業を疎かにするなら武道もやめろと言ったんだ。……どうなるかと思ったが、予想外の方向でそれはいい薬になったようだ」
巨体は
今度は、黙り込む俺に極上の笑顔を向けてきた。
「きっと、それは君のお陰なんだろう。」
―そして
ここまで俺が話した意味が分かるな、と。

