はじめ、穏やかな顔をしていた目の前の巨体も、沈黙が長くなるにつれ眉間に深くシワを刻むようになり、時折吐き出すように重いため息をつく。

身に纏うオーラも、獣のようだった。


この獣のような男の血を、安藤も受け継いでいるのかと思うと一瞬心の中で首を捻ったが、先ほど見た姿を思い出し納得した。


あの、呑まれそうなオーラ。


確かに近いものを感じた。


そんなふうに、半ば恐怖から逃げる為に記憶の中の安藤を辿っていると、巨体が口を開いた。


「………娘が、世話になっている」


その言葉に、
思わずぽかんと口を開けた。

巨体は更に眉間にシワを寄せて言う。

「あれに―勉強しろと言ったのは俺だ。お前を気絶させた後に話をきいたら…あの出来の悪い娘の勉強を手伝ってやっているそうじゃないか」

だが、とそこで言葉を切り、深くため息をついた後に続ける。
その顔は少し赤かった。


「今まで、家に男を連れてきたことが一度も無かったものだから…てっきり、その…なんだ。彼氏、というやつかと思ったんだ」

その言葉に、思わずはあ!?と叫びたくなる。