鍛え上げられた、筋肉の塊のような巨体。
浅黒い肌、伸ばし放題の真っ黒な口ひげ。

俺を捕らえて鋭く光る、その眼。


「…なんだ。おかえり…父さん」


この場で、安藤の呑気な声だけが響いた。


「誰だお前は!!出て行け!!」


次の瞬間、俺の胸倉が掴まれ、壁に向かって思いっきり投げられた。

「−−−っ」


一瞬の出来事に対応できなかった俺は、そのまま壁に打ち付けられて全身に走る痛みに顔を歪める。


さすがに初対面でここまでされるとは思わなかった。

ガタン、という物音で椅子に座っていた安藤が立ち上がるのが分かり、ハッとした。


何となく、これから安藤がしようとすることがわかる。

止めなければ―

そう思い、体を起こして手をのばした。

視界に、手を振り上げる安藤が見える。


あと数センチ−


…しかし


「俺の娘に触るなあああ!!!」



後頭部に、ずしりと重い、電流が走るかのような痛みが走り、それとともに体を打ち付けた熊のその吠えで、それは遮られた。




殴られた衝撃で、視界が揺らぐ。
崩れ落ちてしまいそうな視界の隅
目を見開く安藤が見える。
その顔は苦しそうに歪んでいた。







次の瞬間。

視界が、真っ暗になった。