「いいからさっさと片付けるぞ!」

顔を真っ赤にしたそいつは、俺の手から箱を奪い取り、乱暴にフタを開けて箸と一緒に差し出した。


いい匂いがそこから溢れる。


だしまきたまご、ほうれん草とコーンの炒めもの、ミートボール…。

「ミートボール、作れるようになったのか」

そう小さく笑った俺に
そいつは静かに首を振った。

「…いや。まだ完璧ではないんだ。これでも頑張ったんだが、味が」

「―いいよ。だって俺の為に作ってきてくれたんだろう?」

昨日、俺が我が儘を言ったから。

しょげたままのそいつの顔を覗き込み、笑いかける。


「ありがとう。すみれ」

「−−っ…その名前で呼ぶなあぁ!」


二人っきりの屋上で、ソイツ−安藤すみれの声が響いた。