俺の少し前を、足音が廊下に響きそうなくらい力強い足取りで歩く安藤。

長い髪が、足を踏み出すたびに右に左にと揺れる。

微かに香る甘い香りに、こいつも女子だもんな―なんて今更確認するように心の中で呟く。


「安藤は、なんでそういう喋り方なんだ?」

俺は初めて安藤の声をきいた日から疑問に思っていたことを、その華奢な背中にぶつけた。

振り返った安藤は、少し目を開いて、一瞬の沈黙を置いて口を開く。


「……女らしさというのが…嫌なんだ」

そう言って俺の瞳を真っ直ぐに見つめてくる安藤の瞳は、微かに揺れていた。

初めて見た安藤のそんな表情に戸惑いつつ
言葉の意味を探り黙りこんだ俺に


「……まあ、気にしないでくれ」




安藤は、そう言うと首を傾けて寂しげに笑った。