「下校時刻になりました。まだ校内に残っている生徒は速やかに―」
その放送の途中で、寝ていた安藤ががばりと起き上がる。
その目は俺を捉らず、目をパチパチさせていてまだ焦点が合っていないようだった。
……寝ぼけている。
俺は掌で軽く安藤の頬を叩き、微笑みかけた。
「帰るぞ。下校時間だ」
「……ぬ!?七澤!?何故ここにいる!」
やっと夢の世界から戻ってきたらしい安藤が、目を見開いて俺の顔をまじまじと見つめる。
「生徒会の仕事が終わった後になんとなく寄ってみたんだ」
「……そ、そうか…寝ているところを見られるとは恥ずかしい…」
そう言って顔を赤らめる安藤。
俺は口端をあげて安藤の顔を覗きこんだ。
「いや。なかなか可愛かったぞ」
「――なっ……!かかっ…帰る!!」
椅子が倒れそうなくらい勢いよく立ち上がった安藤を、俺は肩を震わせて笑った。
これだから、こいつと居ると飽きないんだ。

