俺はため息をついて、手に持った分厚い書類の束で逢沢の頭を叩いた。


「お前に心配されなくても言うつもりだった」

視線を落し、鞄をにぎりしめて動かない安藤のほうへと歩み寄る。

「……悪い。片付けなければいけないことがいくつかあってな…いつ終わるかも分からないから今日は無しにしよう」

俺の言葉に、更に安藤が俯く。

「…すまない。七澤だって忙しいのに」

「−気にするな。別に毎日忙しいわけじゃない」

実際、いつもはそんなに仕事は無い。ただ、たまたまこの時期はイベントが重なり、生徒会長の俺が動かなければいけないことが多いのだ。

「いつまでも僕をこき使えるだなんて思っていたら大間違いなんですよ」

そう何故か得意げに言って俺の腕をがっちり掴み教室の外へと引っ張る逢沢を軽く睨みんだ後、窓際に立ち尽くす安藤に、念を押すように気にするなと笑いかけ、俺は教室を後にした。