心 ―ハジマリノウタ―





「ユア、行けよ…」




後ろから、低い声が聞こえた。


その声はもう、苦痛に満ちては居ない。


何日ぶりだろうか、こんな風に

彼の優しい声を聞くのは。


私は、フェイクを振り返る。


彼も、目を涙で光らせて、

精一杯笑っていた。


もう、カトレアと共に、

工場に戻ってしまったのかと思っていた。




「俺さ、ユアを苦しめているのは嫌なんだ。

それでも、またいつか会えたらきっと、

ユアの言葉を信じられるような気がするんだ。

だから…」




何時も笑ってて。


幸せでいて。


そう言って、私に背を向けたフェイク。


歩き出した彼は、金色の輪の闇を目指していた。


待って。


私には決められない。


私には分からない。


どうすればいいの?


今になって気がつく。


心は無くなってなど居なかった。


ずっと、私の胸の中に在って、

自ら閉じ込めていただけだった。


そして、何時の間にか…

フェイクもカトレアも、

私にとって大切な存在になっていた。


私はどちらを選べばいいのだろう?


大切なモノが多過ぎて、

どちらにいけばいいのかわからない。


どちらも、大切すぎて選べない。


私の瞳から涙が零れ落ちた。