その声を認識したカトレアが驚いて振り返る。
そして、そっと囁いてから、
私に譲るように前から退いた。
「ジグ、そういうことだったのね」
ジグ?
そういえば、彼は任務前に言った。
心の感ずるままに選択しろ、と。
ジグには彼らが此処に来る事が
分かっていたのだろうか。
選択?
そんなもの、分かりきっている。
ハートを持つ者の服を着て、
ドレイを操って…。
彼らが私を、受け入れるはずがないのだ。
「ユア、よく聞いて」
カトレアが言った。
私はカトレアの美しい瞳に目をやった。
私と同じ、よく似た黒い瞳。
その瞳には何が映るのか。
「残念だけど、任務は失敗よ。
確かに沢山の人を感染させることができたけれど、
皆死んでしまった。
能力者たちも着てしまって、私たちにできることは、
もう帰ることだけ」
カトレアは落ち着いた声音で言った。
しかし、その掌は震えていた。
その瞳も悲しみに溢れているように見えた。
どうして、そんな風に、
私を見つめるのだろうか。
どうして、そんな風に、
私の頬を撫でるのだろうか。
カトレアは、それからポケットから
金の輪を取り出して、空中に放り投げた。
そこに再び闇が広がった。
あの、赤い世界へ繋がる入り口だ。
そして…帰り道、だった。
「これは貴方の選択だから、
私達は決められないし、口出しも出来ないわ。
貴方が決めるのよ。
この子達の元へ帰るか、私たちと来るか、
貴方自身で決めなさい。
どちらにしろ、私たちは責めたりしないわ」
どうして、そんな事を言うのだろうか。
私の居場所は、フェイクの隣で、
カトレアの側で、
それ以外に、もう何処にも無いのだ。
私に背を向けたカトレアは、
一歩踏み出したかと思うと、立ち止まって
振り返った。
そして、躊躇うように口を開いて、
付け加えた。
「ユア、愛してるわ。
例え、私の子ではなくても」

