心 ―ハジマリノウタ―




B棟の23階は、シンとしていた。


本当に僕らしか居ないようだ。


薄暗い廊下の先にぼんやりと

部屋が立ち並ぶのが見える。


近付くと、ドアの隣にカードリーダーがあり、

空き部屋には、カードキーが

さしたままになっている。


メイが隣の部屋に入ったのを見届けて、

僕も空き部屋に滑り込んだ。


部屋はシンプルだが、

過ごしやすそうだった。


白く塗られた壁に、茶色で揃えられた家具。


荷物はアジトに着いてから預けたので、

誰かが届けてくれたようだ。


くたびれたトランクが寂しげに

ドアの脇に置いてあった。


これから、ここが、

僕の部屋に、家になるのか…。


そう思うと、少し、前の部屋が懐かしくなる。


いや、と僕は首を振った。


またきっと、帰れる日が来る。


そのときは、ユアも絶対に一緒だ。


誰一人として欠けることなく、

帰るのだ、僕らの家に。


そのために、今できる事をやろう。


僕は、再び部屋を後にした。


まず僕ができるのは、治療を受けて、

師匠にあって、強くなる事だ。


強くなって、

大切なモノを、この手で守る。