心 ―ハジマリノウタ―





「イレが死んで、私とジグの計画も、

フェイクの計画も失敗に終わった」




カトレアがそっと私の髪に触れた。


フェイクがいつもするように、

優しく髪をすく。




「フェイクは、貴方のどこに惹かれたのかしらね?

勿論外見もそうでしょうけど、

きっと、フェイクを見ても驚かなかった貴方に

カルチャーショックを抱いたんでしょう」




確かに、私は彼が飛んで来ても、

何も言わなかった。


でも、それは、私が心亡き者であるからで、

恐怖も、憤りも、何の感情も抱く事ができなかったからだ。


フェイクは、私を勘違いしている。




「貴方を連れてくるのに失敗した彼は、

貴方を忘れられなかった。

それからのフェイクはずっと計画を練っていた。

それも、貴方が自分の意志で、ここへ来る方法を。

そして、私たちは時期を見計らって、

ユアという名前をフェイクに教えたの。

それから、彼を貴方の元へ、向かわせた」




あの治療室の廊下で、私はフェイクに再び出会った。


彼は嬉しそうに私の名前を呼んで、

自らの名前を呼ぶことを望んだ。


私は、彼が私には触れられないのだろうと思って、

何も言わなかった。


しかし、考えてみればあの頃の私は、

心を持っていたのだ。


恐れても、叫んでも、怒っても、攻撃しても、

おかしくはなかったのだ。


けれど、私は、何もしなかった。


あの頃の私には、力があったというのに。


既にわかっていたのかも知れない。


私には、新しく居場所が必要になることも、

離れ離れになってしまうことも、

全て。


今となっては、結果論に過ぎないけれど。