心 ―ハジマリノウタ―





フェイクは何も言わなかった。


そっと視線を上げて、彼の表情を伺うと、

嬉しいのか、悲しいのか、

よく分からない複雑な表情をしている。


ようやく口を開いたフェイクは、

思わぬ事を言った。




「それで…ユアは落ち込んでいるのか」




落ち込む?


そんな事はない。


ただ少し、混乱しているだけ、だ。


私が首を振る前に、

フェイクは、苦しそうに私から目を逸らした。


どうして、そんなにも、苦しそうな顔をするのだろう?


本当に、彼は私よりも、何倍も、

人間らしいのだ。




「そうだよな。

奴らから見れば、俺たちは敵。

ジグも、裏切り者…。

裏切り者の娘なんて、奴らに歓迎されるはずがない。

だから、ユアは落ち込んでるんだろ?」




私は…。


奴ら、というのが誰を示すのか、わかってしまった。


彼らは、もう、私を受け入れてはくれない。


でも、それは、私が裏切り者の娘だからではない。


私が…本当に裏切ったから。


彼らを守るために、フェイクの手を取って、

自ら、敵に身を転じたから。


それなのに、私は、そんなことを気にしていたのだろうか。




「フェイク、違います!

私は…落ち込んでなど、いません。

ただ、今はまだ理解できていないだけ、です」




だから、そんなに悲しい顔を、しないで…。