心 ―ハジマリノウタ―





答えたのは、私だった。


私の答えを聞くなり、

カトレアはパッと表情を明るくし、

嬉しそうに手を合わせた。




「ありがとう!

フェイク、そんなに不安げな顔をしなくても、

彼女は消えたりしないわ。

少し話をするだけなんだから、

すぐに戻ってくるわ」




フェイクを宥めるように優しくそう言うと、

私の手を取って、扉をあけた。


扉が閉まる前に見えたフェイクは、

尚も心配そうな顔をして、

最後まで私を見つめていた。


本当に良かったのだろうか?


別に断る理由もなかったが、

フェイクがあんなにも不安そうな顔をするのなら、

私はカトレアと話す意味があるのだろうか?


しかし、そう思っても時既に遅し。


カトレアは私の手をしっかりと掴んで、

どんどん廊下を進んで行った。


着いた先は一つの部屋だった。


黒い扉を開くと広がっていたのは、

書斎のようだった。


暖かい光を放って暖炉が燃え、

壁一面に本が並べられていた。


カトレアが私を振り返った。


ちょうど向き合うような形になった私たちは、

暫く何も言わずに見つめ合った。


美しい人だ、と思う。


しかし、その表情は、固い。


どこか緊張しているようだった。