心 ―ハジマリノウタ―






「ええ、今日はね、

ユアに用があって来たの。

少し、ユアを貸して頂ける?」



カトレアが穏やかに言うと、

フェイクが急に声を低くして尋ね返す。


カトレアは困ったように眉を下げている。




「ユアに?何の用?」




「まあまあ、いいじゃないの。

ねぇ、だめかしら?」




フェイクは私を見た。


彼の表情は不安げだった。


確かに、私はこの館に足を踏み入れてから、

フェイクの居ないところへ

行ったことがない。


ましてや、独りで話した事さえもない。


私は、不安など感じないが、

フェイクは不安そうに私を見つめている。


まるで、フェイクが側に居なければ、

私が消えてしまうかのように。


私は消えたりしないのに。


私には、もうここしか、居場所がないのだから。





「…もちろんです」