宴から部屋へと戻ったフェイクと私は、

部屋から出る前と同じようにソファに腰を下ろした。





「驚いただろ?

あの人が、俺たちのボスだって」




ジグの事だ。


私は首を横に振った。


驚きも悲しみも、もはや私には存在しない。


たとえ、存在したとしても、

そんな風には、感じなかっただろう。




「そうなの?

まあ、あの人は、何も話さないから。

実際どっちの味方かも怪しいけどね」




フェイクは、私に片目を瞑って見せると、

おかしそうに笑った。


どちらの味方か分からないのに、

何故、信頼できるのだろう?


私達…いや、能力者の一部は、

完全にジグを疑っていたのに。




「何故、どちらの味方かも怪しいと思うのに

笑えるのですか」




「何故って…

それは、ジグが俺たちの味方だって信じてるからさ」




信じる。


その言葉に、私は目を逸らした。


私にはもう、縁のない言葉だった。